ボーラーハットは今ではまず見かける事が少なくなりましたが、明治、大正、昭和と日本でも広く知られていました。
アメリカでは”ダービーハット”と呼ばれており、日本では通称”山高帽”と言われています。
礼装用、または準礼装(真ん中が窪んでいるハット)に用いられてました。
このボーラーハットはイギリス・ロンドンのピカデリーでハッター業を営んでいた、ROBSON&Coが製作した物です。年代は詳細不明ですが、それなりの地位にいた方の者であることは間違いなさそうです。
写真でもわかるように、日本の銀座松屋のWネームになっているので、松屋から発注依頼した物のようです。しかし、帽子のケースは何故か”三越・・・”となっています。おそらく何個かハットをもっておられて、入れ物だけが変わってしまったようです。しかし当時の三越や松屋といえば一般大衆がこぞって買物ができるものではないでしょうし、この所有者もすごいな・・と思わずにいられません・・・

さて、気になるのは製帽商のROBSON&Co,ハットといえばイギリスですし、しかもピカデリーサーカス地区といえば回りにはジャーミン・ストリートやサヴィル・ローが混在した英国紳士御用達のタウンでもあります。当時にこの界隈で商いをしているという事はそれなりの歴史や由緒があるでしょう。ハットの裏地にはロイヤルワラントらしきものが縫い付けられています。さっそく前回このHPでも紹介したクリスティートップハットの際に教えて頂いたロンドン製帽業者の老舗Jamas Lockに問い合わせてみました。
数日後返答があり、ROBSON&Coについて教えて頂きました。
1900年にロンドン・ピカデリーで創業したらしく、製帽商としては中心的なお店であったようです。しかしながら1960年代に入り、廃業に追い込まれ、現在は当然現存しないメーカーでもあります。ジィームス・ロックのマネジャー曰く、この廃業はイギリスにおける製帽業の衰退を意味し、以降現在に至るようです。非常に悲しい事であるとおっしゃっていました。

現在は私の部屋でひっそりとその歴史の流れを感じながら、精悍な構えで佇んでおります・・・
何気に身近に見つかったりするものにも隠れた歴史があります。たかがハットでしょうが、されどハットです。何の事やら・・・